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初心者が綴る。 初心者ゆえの駄作。 そんな、なのフェイなの。

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行キ着ク果テノ世界60








ふと、自分の部屋へと戻ろうとしたとき、見知った顔を見つけて、立ち止まった。

視線の先、廊下のちょっと先の部屋の中で、小さな子ども達、二人を。
呆れたように腰に手をついて見てる。
白い白衣に、見たこともない鋭い目…、グランツ博士だ。
一体なにを…?

好奇心に背中を押されて、その部屋へ少し歩み寄る。
中の様子が見えるぐらいの距離で。
きっと向こうからは、私は見えないだろう死角の場所に。

「どうしてそんな事を言うんだい? 『いなくなっちゃえ』なんて、ダメだろう?」
「だって…っ、先に『どっかいっちゃえ』って言ったもん」
「違うよ!先に言ったのはそっちだよ!」
「…どっちが先にとかは、別に良いんだよ。問題は、どうして力を使ってケンカをしたかということ。安易に使ってはいけないと、いつも言っているだろう?」

どうやら、過去に実験を受けた子ども達なのだろう。
二人がケンカで力を使ってしまったコトを怒っているらしい。
確かにそのキモチ一つでどんでもないこともできてしまう。
ここでは、それがご法度になってるのか…。

「ここのところ、すごく仲が悪いらしいね。どうして?二人とも仲良しだったはずだろう?」
「…だって…『力がちゃんと使えないなんて、バカみたい』って言ったもん…。だから」
「そっちだって、暴走しちゃった私の力を見て『化け物みたい』って言った!」
「あぁ、こらこら落ち着きなさい。」

ピリピリし始めた空気に、グランツ博士は二人の頭をおさえる。
確かに、子供のケンカにしては…ちょっと行きすぎかもしれない。
しかも、二人は幼いながらも能力者。
このままだと、きっとこの場はおさまったとしても、これからだって…
何かあるたびに、二人は衝突していくかも。

「…仕方ない。あまりこの方法は使いたくないんだが…」

溜息混じりに呟いて、彼は二人と目線を合わせるようにしゃがんで、そっと二人の瞼の上に手をかざした。
その瞬間、私は目をみはる。

「仲が悪くなった一ヶ月の記憶、飛ばしてもらうよ?」

言った途端、淡く光りだす彼の両手。
それは、覆っていた二人に何かを送り込むように。
この感覚…まさか、…――能力の発動?
特に攻撃的なそれは感じない。
でも、あれは間違いなく…。

さっき確かに記憶を飛ばすって言った…。
それは、当然普通の人間ができるようなものじゃない。
だったら、やっぱり…、彼はフェイトちゃんと同じように…?

疑問が形になったのは、そのすぐ後だった。
光が掻き消えると同時に、二人は彼女の腕の中に倒れこんだんだ。
見たところ、気を失ってしまっているみたい。
突然のことに、その場で呆然としてしまった私に…

「そこに居るんだろ?」

やれやれ、というような声をかけてきたから。
さすがにバレてしまっては、ここにいても仕方がないか。
私は彼のいる部屋へと入っていく。

「…疑問、バッチリ顔に出てるよ?」
「え?」
「『能力者だったのか?』…って訊きたいんだろ?」
「………うん」

ふっと口元を緩めて、彼はその手に倒れこんだ子を近くのイスに座らせた。
その手を故意的に繋がせて。
なるほどね、目が覚めたら仲良し二人組の出来上がりってワケか…。

それから、その隣に座り込んで私にも座るように促してくる。
話してあげるから…、はっきり向けられた視線が語ってる。
どこか諦めにも似たような笑みが、いつもの彼からは想像も出来ないくらい
『弱さ』を表しているように見えた。

「今の現象に関しては能力ではないよ。ただ僕は研究者だ。人についてあらゆる研究をしてきた。脳の構造も勿論ね。そうして作り上げたのがこれだ。能力は人の記憶を消すことって言ったほうが判るな」
言って博士が両手のひらをこちらに向けてくる。
その中心には何か機械的な物が埋め込まれて…。

「記憶を消す…? 記憶操作ではなく?」
「そう。ただ、記憶を消すことしかできない」
「どうして、そんな力を?」

訊ねると、彼は可笑しそうに笑って「キミは本当にまっすぐだな」なんて言ってきた。
暗に、からかわれているみたいで、面白くない。
でも、そんな私の頭をくしゃっと一度撫でて、彼は言葉を続けた。


「僕が以前何をしていたかは話しただろう?」
「…? スカリエッティと一緒に行っていた研究のコト?」
「そう。その研究チームに入って、僕が初めて携わったのは…初の人体実験の被験者としてだ」
「え…?」
「7歳、なんて年齢が一番好都合が良かったんだろうなぁ…。受精卵や赤ん坊に
遺伝子操作をする前に、幼児でも可能か、確かめたんだ、僕で」

なんでこの人は…他人のことを話すように言えるんだろう?
初の人体実験の被験者って…言い換えれば『初めて生まれた能力者』ってコトでしょ?
そんなに割り切れるものなの?

「あぁ、そんな目で見なくていいよ。結果的に実験は成功したような失敗したようね。僕の場合はね、知的能力が一気に優れたんだ。体力などの身体能力じゃない。知識がね。」

おかげで色んな開発に成功したよ。
そう言って開いていた手をグッと握りしめる。

さっきの二人みたいに辛いことを忘れさせたりな、なんて笑う彼。
知識の発達だなんて、それは単に賢くなるだけじゃない。
まわりの変化を敏感に感じ取って、辛い真実をその知識故に受け止めなくちゃいけない場面がたくさんあったはずだ。


「でも、そのせいで…彼を巻き込んでしまった」
「彼…? スカリエッティ?」
「あの時、彼と僕のどちらかが被験者にならなくてはいけなかったんだ」
「……負い目があるの?」
「負い目…か。いや、もっと、ややこしい感情があったのかもな」

ややこしい? なんだろう、それは。
でも、いくら待っても彼はその『ややこしい感情』については話さなかった。
ただ、どこか遠くを見つめるみたいに目を細めていたんだ。

「よく覚えておくといい」
「? なに?」
「正義というのは、人の数だけある。その人がもつ、それぞれの正義が」
「正義…?」
「しかし厄介なのが、その正義を崩すのも、やっぱり正義なんだよ」
「? 意味がわからない」
「ようは、『キミはキミの信じる正義を貫け』ってことだよ」
「私の…正義?」
「たとえ、誰もが反対するような正義でも…な」
「…っ!」


心臓が、ドクン、と跳ねた。
まるで心を見抜かれたような感覚に。
まさか私のしようとしているコトを彼は知ってるのか、というぐらい。
けれど、彼の顔を覗き見て…否定する。

遠くを見つめるような、その不思議な眼差し。
それはもう、届かない過去を見ているような…ぼんやりとしたもの。

そこで気づく。
彼は…私にではなく、『過去の自分』に今の言葉を伝えていたんだ、と。
もう戻れない、自分自身が進んでしまった道に向かって。

彼と、スカリエッティに何があったのかはわからない。
きっと私なんかが踏み込めない、深い感情がそこにあるんだろう。
けれど、彼の眼差しの中に…私は確かに見た。
彼の信じる正義が、スカリエッティの正義を貫こうとするほど鋭い光があったのを。
こういう時の私の勘は必ず当たる。







彼も…明日、何かと決別するんだろう、と。





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  1. 2017/04/29(土) 00:00:00|
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