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初心者が綴る。 初心者ゆえの駄作。 そんな、なのフェイなの。

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行キ着ク果テノ世界54








目の前の地面に落ちる錠を、ただじっと眺めていた。
ぎゅっと膝を抱えて、崩れた壁にもたれかかり…。

長めの髪は、水を吸い込んで肌に張り付いてしまってる。
でも、もう気持ち悪いとか、そんな思考はとうに麻痺してしまったみたいで
まったく気にならなかった。

…ただ、たまらなく私という存在が疎ましかった。

あんなにナノハから離れたいって思っていたのに…。
ここは…この場所は…。

「ナノハと…初めて逢った場所…」

呟く声は空虚に響き、私の中だけに落ちてくる。

寂しそうに笑って…。
初めて会う私に、殺されても良いだなんて…。
それだけ、心が疲れ切っていたんだろうか…。

話して、接して、笑ってくれるのにどこか寂しそうで。
アリシアにそっくりな私を見て、生まれ変わったのかって驚いていたのかな?
いや、違う…。
きっと、最期の時を思い出して、苦しんでいたんだろうな。

辛い思いを抱えながら、私と接することで苦しみ続けなきゃいけないかも知れないのに、ナノハは私を助けてくれて…。

だけど、私…あの時一瞬…。


『みんな殺しちゃうよ?』



私を守るために言ったあの言葉。
それなのに私、一瞬でも「怖い」って思ってしまったんだ…。
でも、ナノハはそれが当然なんだっていうような目をしてた。
きっと、私の前にもたくさんの人に…怖がられたりしたんだ。

そんな風に強くなれるのに、どれだけかかったんだろう?
私みたいに、初めて拒まれた時は取り乱したり…したのかな…。
それとも…あの時の孤独に満ちた目で、もう全てを受け止めていた…?


「ははっ…私には…できないよ…」

ぐっと抱え込んだ膝に額を乗せる。
もう枯れたはずの涙が、またじわっと瞼を焦がしていく。

こんなにも私…弱虫だったなんて…。
信じていたものが無くなったとき、こんなにも人は脆くなっちゃうなんて…。
違う…信じていたものを裏切ってしまった痛みが、こんなにも苦しいだなんて…。


「ナノハ…っ…くっ…ナノハ…っ」



「君は随分変わった趣味を持っているようだな。こんな場所で。」
「っ!」

突然聞こえた声に、ハッとして顔を上げる。
目の前には、男性が私を見ていた。
それは、忘れもしない、忘れるはずがない顔。
ついさっき別れたばかりの彼が、そこに居たんだから。

「…ぁ…え…?」
「何を驚く必要がある?」

スっと目を細め、見下ろしてくる…スカリエッティ。

「いや、だってここは…ナノハの」
「持ち主は所有権を放棄したのではないかね?勝手な侵入に異議を唱えるなら、君がここに居る理由はなんだ?」
「それはっ!別にナノハはここに帰らないだなんて一言も…」
「ここに立ち寄ったのは、当時の生活の様子を探りたかっただけだ。荒らす目的ではない。」

クククッと笑うスカリエッティに、私は反応できない。
この人の真意がわからないんだ。

グランツ博士達は、この人から私を守る形だった。
それは、この人が私の能力でとんでもないことをしようとしてるって思ってたから。
私も正直、この人からあんまりいい感じはしない。
でも…今、人のどんな形であれ笑顔を見るのが、何故か安心に繋がるんだ。

「で、ここにこのまま居て、何かいい方向に繋がるのかね?」
「え…?」
「とりあえず、君は私と一緒に来るべきだ。安心したまえ、取って食おうってわけではない」
「………」
「無理にとは言わんが?」

あ…。
目が細められて、なんだか顔立ちが柔らかくなった。
心底私を心配してくれているような、そんな眼差し。

どうしよう…?
確かに、ここにずっといても…どうしようもないのは事実なんだ。
でも…この人は…。

「訊いてもいいですか?」
「なんだ?」
「どうして…私の力を狙ってるの?」

そう、私の力を酷いことに使うかもしれない。
だから、ただ近づいてきたのかもしれない。
だったら…一緒には行けないんだ。

「ふむ、直球勝負で来る子だな」
「…………」

言葉とは裏腹に、スカリエッティは全然困った風でもなく、むしろ面白そうに笑っていた。
その笑顔の奥にある感情は読み取れない。

「…あえて言うなら…」

そこまで呟いて、突然真剣な眼差しにかわる。
偽りと感じさせない、鋭いその瞳に。

「『能力があるってだけで差別される世の中をなくしたいから』だな」
「差別…?」
「君も知ってるだろう。少なくとも特異な力を持った者というのは普通の人間から後ろ指さされるということを」
「………」

確かに。
最近はずっと、ナノハやアミタ達と一緒にいたからあんまり感じなかったけど、それでも、力を恐れた人がなんていうかとかは知ってる。

―――『化け物』と。

「それに、私の研究に関わった物がそういう扱いを受けるということは、私自身が批判されていると同じ事。私が余計な事を考えず研究に没頭するために、君の力が必要だ。」

…一瞬感動しようとしたのに、要は自分の為って事!?
やっぱり何考えているか分からない。
だけど―

「……人を消しちゃうような力があるのに?」

訊ねると、「それは違う」と軽く片手を振って鼻で笑う。

「それはコントロール出来ていないからだ。訓練し始めて日は浅いのだろう?」
「まぁ…訓練というか…」

なんでそんな事を知ってるんだろう?って疑問は浮かばなかった。
なんだか、全てをこの人は知っていて当然なんだっていうオーラがあったから。
『君のことなら、なんでも判る』というような、そんな。

だとしたら、今私がこんなところにいるのも…全部知ってて?
何があったとか…そんなことまで、もしかしたら知ってるかもしれない。
それで声をかけてきたとすると…弱みに付け込んで…?
でも、そんな感じはまったくしない…。

「私の所へ来て、力の制御だけでもマスターすべきだ。」
「え…?」
「自分の意思で決めたまえ。なんなら、力の制御だけ覚えて帰っても良い」
「…本当…?」
「…いや、まて。この状況が…ブツブツ…」

急に何か思い立ったのか、ブツブツと考え始めるスカリエッティ。
研究者ってみんなこうなの?
こっちの話しなんて耳に入らないといった様子で、思わず笑ってしまった。
そして、気づく。
私、この人を信じようとしていることに。

たった今逢ったばかりなのに、どうしてだろう?
自分が今、凄く精神的に参っているからなのかな…?
でも、もしそうだったとしても、この人は…私の意志を尊重している。
強引に何かしようと思えば、今の間にいくらでもできたのに。

ふと、脳裏によぎるのは、ナノハの傷ついて眠っていた姿。
自分の未熟な力と心が、ああしてしまったんだ。
ちゃんと、自分自身の力を制御できていたら、あんなことには…。
深い深い溜息が零れる。

もう…ナノハの元には戻れない…のかもしれない…。
だったら、私は…。

「…連れてって…、一緒に」
「いいんだな?」
「……うん」

頷いた私に、一度なんともいえない表情をして、スカリエッティは手を差し出してきた。
その手を…私はゆっくりと握り返したんだ。

「忙しくなりそうだな」
「え?」
「いや、こっちの話だ」

私の手を引っ張って立たせてくれると、自分のコートを私に羽織ってくれた。
そして…研究所とは別の方向に、私達はゆっくりと歩き出した。







スカリエッティが視線を向けた先に、一匹の狼がじっとこちらを見据えていたんだけど
私は、全く気づかなかったっけ。






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  1. 2017/03/18(土) 00:00:00|
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