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初心者が綴る。 初心者ゆえの駄作。 そんな、なのフェイなの。

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行キ着ク果テノ世界31






「315番、起きろ」

そんな声で、私は目を覚ました。

あれ…? 私は一体どうしたんだろう…?
確か、ナノハを見つけて…話して…それで?

っ! そうだっ! ナノハが辛そうにしててっ、触れようとしたらいきなりっ!
あれからナノハはどうなった!?

慌てて辺りを見渡そうとするけど―――身体が動かなかった。
その指先までもすべて。
な、なんで?

不思議に思っていると…視界が開けた。
その先には、真っ黒な服を纏った男の人が二人…じっと私を見つめている。
誰…だろう?

「次の仕事だ」

告げたのは、そんな言葉。
え…? 任務? 私に? どういうこと…?
わけが判らなくて、首を振ろうとするけど…意思に反して私の首は縦に振られた。
そして、発した言葉は、

「はい」

っ!?
今の声…っ、私の声じゃない!
これは…――ナノハの声っ!
まさか…っ!


「最近のお前の達成率が、著しく落ちている。なぜか判るか?」
「判りません」
「だろうな。教えてやるよ、お前は『感情』なんて無用なものを捨てきれていないからだ」
「言葉の意味、判りません」
「結構。それでいい。お前は何もわからなくていいんだ。我々の命令だけを聞いて動く
機械なのだからな」
「はい」

「だが…これ以上の失敗は許されない。よって今回の仕事が失敗に終わったとき…文字通りお前も『終わり』だ」
「はい」
「よし、出ろ」


私の手足にはめられた鎖の鍵を開ける男の人達。
私は、軽くなった手足を一度動かして立ち上がる。
そして…男の人の後ろ…、そこにあった鏡を見て…――愕然とした。

私は―――ナノハだったんだ。
違う…正確には、ナノハの『中』に私はいたんだ。

(どうして…)

呟いてみて、思い出されるグランツ博士。
あの機械を使って、こうやってナノハの過去に飛べたわけで…それは理解できる。
でも、こんな事態が起こるなんて一言も言ってなかった。
ましてや、こんな風に心が繋がるみたいな…そんな…。


え…? 心が繋がる…? もしかして…一緒の場所に存在するっていう意味だけじゃなくて…、こうして一心同体にもなりうる…!?

ということは…ナノハと私が出逢うだけでなく――同じものになったってこと?


「…? どうした、315番。立ち止まるな」
「…耳鳴り、した」
「耳鳴り? 何を言っている。さっさと来い」
「…はい」

耳鳴り。
ナノハは確かにそう言った。
ということは、私の声はナノハに届く…?

(ナノハっ! 聞こえるっ!!)

呼びかけてみるけど、ナノハは無反応。
やっぱり届かない…?

そう思ったその時、私を包んでいる空間が微かに揺らいだ。
その揺らぎに感じたのは―――戸惑い。

聞こえている…っ、私の声はナノハに心の中だけみたいだけど届いてる…っ。
確信して私は、続けてナノハに呼びかける。

(ナノハっ、目を覚まして! これはただの過去なんだっ!)

でも…

「315番、今回の任務を告げる」

その言葉が聞こえた瞬間、ナノハの感情の波がなくなった。
ダメだ…ナノハの心の闇が大きすぎる…。
でも諦めるわけにはいかない…、様子を見てもう一度…止めてみよう。
仕方なく、私はナノハの視界を通じて状況を把握する。


「ターゲットは、この街の娘だ。場所は…」
「………」


口頭で述べられる言葉を、記憶していくナノハ。
私の脳にも場所やターゲットと呼ばれる人物の情報が流れ込んでくる。
やっぱり…私とナノハが同化してしまっていることを痛感させられた…。


「その家の者に見つかった場合は全て殺せ。」
「はい」

殺せっ!?
今…この男は確かにそう言った。
まさか…この世界が…このナノハの過去全部が…悪夢?
そんな…。

不意に、立てかけてあった鏡に映るナノハ。
それは…―――私の知らないナノハだった。

冷たく…本当に機械的で…生きる意志が感じられない瞳で…。
人を信じて、歩み寄った結果が…。


「行け」
「はい」

でも、私の戸惑いをよそに、ナノハは…部屋を出て行った。
その心に、私を連れて…。






*********







気がついたら、ナノハは一つの屋敷の裏手にいた。

「…いけ」

男の合図でナノハは音もなく屋敷へ近づき、素早く裏手の塀を駆けあがる。
その背を突き刺すような鋭い男達の視線が…痛かった。

けど何かに支配されたような頑なな心で、ナノハは屋敷の中に進んでいく。
塀を飛び越え、ふわりと空気に乗るようにして落下…着地。
裏口まで誰にも見つかることなく近づき、鍵を壊すと静かに息を潜ませ中へ…。
鮮やかとも言えるその行動に、私は何もいえなくて…ただ目を丸くするだけだった。

屋敷の中は…当然だけど真っ暗で…。
でも、ナノハの視界は驚くほどクリアで、全体が見渡せたんだ。
これは、夜行性と言われるヴァンパイア特有の能力なのかもしれない。


「…殺す…任務」


確認するように呟くと、それらしい気配を辿ってナノハは中央の階段を駆け上がる。


(ナノハ…っ やめるんだ!)


呼びかけるけど、全くの無反応。
聞こえていないわけじゃない。
でも、任務という柵に囚われたナノハの心はただ空虚なもので、他の何も受け付けていなかった。

スウ、と一度大きく息を吸い込んでからナノハは一つの部屋に歩み寄っていく。
同時に両手を準備運動のように軽く振って、その爪を不気味に光らせる…。
…と。
そこでナノハの足が止まった。
同時に、全神経が鋭く研ぎ澄まされていくのがわかる。
つま先や、指先がひどく冷たいのに、身体の芯が…熱い。

誰かが近づいてきてる…?
ナノハと同化しているせいか、私にもそれが判った。

すぐそば…。ナノハのほうに誰かが…。

気づいたときには、ナノハは行動に移っていた。
一つの扉に、腰を低く構え…駆け抜けた…。


(ナノ…っ!!)


ザシュ!ザシュ!ザシュ!


『ぐぅ…っ!?』


なんの躊躇いもなく…その爪で引き裂いた。

同時に響いた、何かが床にくず折れた音。
それはきっと、この家の誰かが…。
ナノハが、その手で…っ。


(ナノハ…っ、やめて…!やめるんだっ!)


考えたくなくて、必死になってナノハによびかけた。
でも…ナノハの頭には…1つのことしか浮かばない。

『任務を、遂行する』、ということしか。

そのまま一番奥の部屋まで、駆け抜けていくナノハ。
幸い、あれ以降誰に出会うこともなく…私は少しだけ安堵していた。
でも…まだ、完全には安心できない。
だって、ナノハの任務が…人を殺めてしまうことなのだから。


「…ここ…いる」


つぶやくナノハ。
それは一番大きな部屋の前。
私にも、判った。
ここに…まだ幼い誰かの気配がナノハ越しに伝わってきたから。

ガタン…

しずかに部屋にはいり…辺りを見渡す。
可愛い小物や、ぬいぐるみの数々がここにターゲットがいることを確信づけているみたいだった。

そして…中央にあった一つのベッド。
そこに…いた。

ナノハもその気配を確認して、その爪をそのベッドに向けて…―――止まった。


「!?」


その胸に広がったのは…戸惑い。
それは表情にも表れていて、軽く息を飲み込んだのが判った。

ナノハの戸惑いの正体は…目の前で眠るターゲットの娘さん。
私もナノハの視界越しに確認して…驚いた。

だって、その娘は…まだ赤ん坊だったんだ。


これが…ターゲットの娘…? まだ子供じゃないか…っ。
どうして…っ。
こんな子供を…ナノハが…。
っ! それだけは絶対に駄目だ!!


(ナノハ!!)


必死になってもう一度呼びかける。
でも…ナノハは変わらずの無反応。
ただ、視線をその赤ん坊に向けたまま静止している。


「…? うー…?」


…と、そんな私たちの気配に気づいたのか、赤ん坊が目を覚ました。


「あー?」


純粋なその瞳が、くるっと天井を見渡して――ナノハを見つけ。

ナノハの目をまっすぐ見つめると…


「あ~あ~」


手を指し伸ばして、笑った。


「…っ!?」


困惑するナノハ。
構えていた腕を、だらりと下げ、戸惑う。
私にも伝わってくるその戸惑いは、任務の事なんてもうすっかり忘れ去らせてしまっていた。

ただ、目の前の赤ん坊から視線がはずせない。


「どう…して、笑う? どうして、私に、笑う…の? 笑ってくれるの? 私は、人間じゃない」


呟くようなナノハの声に、ハっとする。


ナノハは…感情を思い出そうとしている…っ。
機械なんかじゃない、ちゃんとした心を。
今、むちゃくちゃに消されてしまいそうになっているものを取り戻そうとしている。

もしかしたら、ナノハは過去の悪夢から自分で抜け出せるかもしれない…っ。


「あーあー」
「………」


赤ん坊の誘うような声に、ゆっくりと手を伸ばしていくナノハ。
私もそれをじっと見守りながら、強く祈った。

思い出して…、と。

その時…。


バタン!!

「315番! 何をしている!!」

部屋の扉を蹴破るようにして入ってきた男達。
その人達は…ナノハに命令していた…あいつらだ…っ。
男達の足音と声に、ナノハの身体が軽く跳ねた。
伸ばされた手も、すぐさま戻されて…。


「…何をしていた」
「………」
「答えろ」


詰め寄られて…、うつむくナノハは…それでもその手で拳を作っていた。
何か…想いがこめられたみたいに。
そして、それは上げられた瞳にも、光があったんだ。


「できない」
「……、その返事が何を意味するのか判っているのか?」
「……私は、人と仲良く…」
「…!?まさか、お前!?」
「私は…人間と…」


再びうつむくナノハ。
でも、


「おいっ!この化け物、失敗だ!刃向う前に、殺せ…!」


男たちの手に、冷たく輝くナイフや鈍器。
向けられた瞬間――


「まてっ!!」


ガシャーン!!

ナノハは、本能的に窓ガラスを蹴破って…外へ逃げ出していた。
その手には…傷つけないように、けれど決して離さないように力強く、泣き叫ぶ赤ん坊。
いつのまに降り始めていたのか…外は雨が降り始めていた。






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  1. 2016/10/01(土) 00:00:00|
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