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初心者が綴る。 初心者ゆえの駄作。 そんな、なのフェイなの。

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行キ着ク果テノ世界29








目の前に広がった世界に、私は愕然とした。

イスに座らされてる私。
その額に、色んなパッチを貼られていて…手足は皮製のベルトのようなものでイスに固定され拘束されていて。
そんな私を、何人もの白衣を纏った大人たちが見下ろして、その手に持ったボードに何かを書き込んでいってる。

その情景は…随分昔に体験した―――忌まわしい過去の記憶そのもの。

どうして…っ。
なに…!? これは一体…!? どういうことなの!?

「被験者番号315番、脳波に乱れが感じられます」

戸惑う私を見た一人の男が、別の男にそう言う。
それを聞いたそいつは、何かの液体を注射器に注入しようと私に歩み寄ってきた。

イヤだ…、やめてよ…っ!!

声に出したいのに、何故か言葉は出てこない。
その代わりに、ただだらしなく『あぁ』とか『うぅっ』とか呻きに似た声しかでない。

なんで…!? なんでこんな昔の記憶が…!?

………。
まって…、昔…?
だとすれば、この時の私は…っ!

あたりに視線を向ける。
どこかの施設なんだろう、鉄製の壁は鈍い光を放っている。
…と、その僅かな鏡のように輝く場所で自分の姿を確認する。

「……!?」

息を飲んだ。
私の姿は…両の翼を持った、ヴァンパイア。

私の記憶が確かならば…、この頃の私は人間に捕まって外界からの 情報などなくて…『言葉』というものを、どんどん失っていった。
そして、たしか…

「抗原ウイルスを注入します」
「あぁぁっ! うぅあぁっ!」

突き立てられた注射に激痛を覚える。
熱く燃えるような感覚と一緒に、体内の力が抜けていくのが判る。
意識さえも朦朧とするような強い薬に、自意識がなくなっていく。

やっぱり…私は、この時…

「315番、お前のヴァンパイアの力。それは…人間に貢献してこそ価値がある。崇高な機械として動けばいいんだ」
「お前は、人を狩る機械だ。心などいらない」
「我々の命令だけを聞け」

『機械』として、生を受けたんだ。

「脳波、安定していきます」

イヤだ…、私は機械なんかじゃない…。


「検査結果では、通常より感情の起伏が激しいらしいですが…ウイルスには勝てませんか」

私は…違う…。

「特殊なものだからな。免疫値が最大まで引き出せるし学習能力も恐ろしい速さで発達する」

ワタシは…

「数週間後には、忠実な破壊兵器が完成する、ということですか」

ワタシ ハ…

「力を持ったものが、世界を制す。それをこいつで証明するんだ。…なぁ315番」


「……ハイ」


―――ワタシ ハ…ナニ?


暗闇に落ちていく『私』の意識。
最後の瞬間、あの子の笑顔を見たような…気がした。








*********









「安眠装置?」
「そうだ、ナノハ君から話しは聞かなかったのかい?」


あの森での襲撃の後、アミタに連れられグランツ研究所にやってきた私とナノハ。
ここまでの道中も、そして今も、ナノハは相変わらずボーっとした様子だった。
少し疲れが見える、気怠い感じ。
そんなナノハを見た、この研究所の最高責任者、グランツ・フローリアンは私との挨拶もそこそこに、目の前に大きく佇む不気味な機械を勧めてきたんだ。
そういえば…ナノハとはやて、変な機械を見たって言ってたな。


「いきなり、来てこんな怪しげな機械を安眠装置だなんて、信じられるわけないじゃない。それに、ついこの間まで私を狙っていた人たちの話しなんて…」


そう、あの時だって、怪我した身体で必死に私を守ってくれたナノハ。
怪我をしたナノハに容赦なく攻撃して…そんな人たちに大丈夫だなんて言われても、何も信用できない。
危害は加えないと約束したアミタは、先程の怪我人を手当てするからって席を外してしまった。今ここには、ナノハと私、そしてグランツ博士のみ。


「確かにそうだね。けれど、アミタから話しは聞かなかったかい?君たちに危害を加えるつもりはないよ。少し事情が変わったんだ。」
「だからって…」
「それに、これは君の力も必要なんだよ。」
「どういうこと?」


ふむ。と顎に手を添えて、博士は装置に近づき、ゆっくりとスイッチを入れた。
コポコポ…ウィーン…
その音は、先程からいう安眠とは程遠い音で、何かの実験を連想してしまう。


「これは間違いなく安眠装置だよ。ただし、普通の睡眠を与えるだけの物じゃない」
「…………?」
「君は、ナノハ君についてどこまで知っているんだい?」
「どこまでって…」


ナノハは私と出会ったあの屋敷に一人で住んでいて、アリシアと出会って、色んな思い出を作って…その後も、ずっと一人で…。


「……私は君について調べた、必然的に、辿り着いたのはアリシア・テスタロッサという一人の女の子。その女の子を調べれば調べる程、出てきたのは一匹のヴァンパイアだった。」
「それが、ナノハ?」


その通りだ―言って少し眉をひそめる博士。
言うのを躊躇うかのように、言葉を選ぶのに困っているかのように、彼は口を開く。


「彼女はね、化け物だと人間から怯えられ、仲間を殺されても、人と心を通わす事を諦めなかったんだ。人を信じては裏切られ、傷つけられ、それでも何度も何度も立ち上がったんだ。」
「人間は、ナノハに歩み寄ろうとはしなかったの?」

「誰一人居なかったよ。君と、アリシア・テスタロッサを除いてはね。」
「…………。」
「家族を、殺されたんだよ。ヴァンパイアだから、ただそれだけの理由さ。」
「…………!?」
「不屈の心も、家族を失う事には耐えられなかったようだ。それ以降、ひっそりと生きていくことを選択した何年も先、彼女はアリシアと出会った。」


優しいナノハ。
そのうちに秘めた心はボロボロで、もしかしたら壊れる寸前だったのかもしれない。
ほんの少し、ぼやけた視界に、自分が泣いていることに気付いた。
隣に居るナノハに気付かれたくなくって、ギュッと抱きしめる。


「アリシアという女の子は、家族を亡くしたナノハ君にとって、本当に大きな存在だったみたいだね。」


『私の事、怖がらないでくれてね―』
『翼、カッコいいって褒めてくれたんだ―』
『アリシアちゃんはね―』


もう居ないアリシアを想って、少し辛そうで、だけど本当に楽しくて幸せだったんだってナノハは教えてくれた。
そのアリシアとの思い出に、少し嫉妬してしまったのは記憶に新しい。


「誰かが死ぬこと、誰かを殺すこと、ナノハ君の根底には死が深く根付いているんだ。大切な人を侮辱されたり、傷つけられることは、ナノハ君には耐えられない」


話しを戻そう―と、博士は再び装置に目を向ける。


「これはね、対象者の夢に飛び込むことが出来るんだ。夢と言っても、その対象者の過去と言った方が正しいね。」
「夢…過去?」
「その心に宿る不安や恐怖心なんてものは、無意識に安らぎを奪ってしまう。簡単に言えばこの装置は克服マシンみたいなものだ。過去のナノハ君を救ってあげてほしい。それが出来るのはその対象者が心を許した人物のみ。」








行っておいで―そう言われるやいなや、私の、私達の意識はそこで途絶えた。






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  1. 2016/09/17(土) 00:00:00|
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